「深紅」

前評判が凄く悪かったんで、ほとんど期待してないで観たんですけど、思ったより全然面白かったです。ただこれは僕が原作を読んでいたからかもしれないなあ。内容はうろ覚えだったけど、原作読んでるのと読んでないのとじゃ受け取り方が全然違う気がする。
ひどいと言われていた一因に演出の悪さが挙がっている事が多かったんだけど、うーん確かにこりゃ陳腐な演出だわ。やたらモノクロにしたり、妙に顔アップが多かったり、一番きつかったのが少女時代の奏子(堀北真希・なんと小学生役)がトイレで回想しているシーン。あそこはちょっとなあ。

深紅 [DVD]

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以下ネタばれ。


キャストは良かったです。堀北ちゃんの小学生役はさすがにちょっときつくて、小学生には見えなかったけど、この子はやっぱり陰のある役の方がハマるよ。水川あさみちゃんもいかにもDV受けてます!って感じで(失礼な)元々どこか陰のあるタイプの女優さんだし、ハマってました。個人的にはもうちょっと内山理名に頑張って欲しかったんだけどねー。感情が激しい役はちょっと似合わないよな、ただヒステリックな感じしかしなくて。
一番良かったのが緒形直人。狂気をはらんだ役がかなり上手くて怖かったです。そして小日向文世の底意地の悪そうなオヤジ役も似合うんだなあこれが。内容が内容だからかもしれないけど、過去シーンの方が引き込まれた。いやー現在のシーンも悪くはなかったんだけどね。いかんせんちょっと地味だったかも。それに原作読んだときも思ったんですけど、奏子(内山理名)と未歩(水川あさみ)のキスシーンは要らないと思うんだよね。正直何を意味するか分からなかったし。でも未歩が奏子=被害者の娘だと知っていた、っていうオチは原作と違ってて新鮮でした。まあここは賛否両論だと思うけど。ちなみに僕はこれでも良いんじゃないかなーとは思いました、はい。


脚本家と原作者が同じだけあって、伝えたい事をちゃんと伝えきれているというか、さすがに過不足ない感じだったのですが、ちょっとそれでも長ったらしく感じられたんだよなあ。というか最初の遺体安置所(?)までに連れて行かれるシーンが長い。例の4時間の重みを持たせるためわざとしたんだろうけど、それでも妙に長かった。あと原作にあった「父親の遺体の頭がぺちゃんこに」っていうのが分かり辛かったですね。もしかしたら表現する気は無かったのかもしれないですけど。回想シーンでも奏子の父親(小日向文世)が頭を殴られるシーンは具体的には映ってなかったし。
ただ脚本が上手いなあと思ったのが、過去と現在の殺人が交錯するシーンと(原作は確か過去の事件は調書ぐらいでしか語られてなかった気が)、あとパーキングエリアでの鏡のシーンですね。って後者は原作でも同じだったんですけど、やっぱり映像で見ると違うなあと。そしてこれは脚本の力か演出の力か分からないですけど、未歩の父親(緒形直人)が犯行を終えた後に血がだら〜ってなった時、血が異様なほど赤々しかったのが良かったですね。まさに「深紅」って感じで。


ふと思った。今後小説をドラマ化・映画化する時はその脚本家に書かせてみるってのも手かもしれないですね。金城さんの件もあるし(あれは全体の構成がちょっとまずいと思うけどさ)。