町田康『告白』

<河内十人斬り>で唄われている城戸熊太郎、谷弥五郎。兄弟の契りを交わした二人は、何故、人を殺したのか。

告白 (中公文庫)

告白 (中公文庫)

これは面白い。まず、快活な河内弁が独特なリズムをかもし出していて良いです。そして普通なら一行で説明できるようなこと、たとえば「熊太郎は畑を耕そうと思ったが、面倒臭いのでやめた」と書けば済むことを、それを10行以上にわたって書くのが多いですwでもそれも不思議と鬱陶しくない。むしろ文体として綺麗な出来上がりになってます。
何より良いのが熊太郎のキャラクター。自分の思ったことを上手く伝えられないとか、恥をかきたくないから遊びなどでも本気にならないとか、はっきり言って他人事とは思えません。物語はもちろんのこと、この熊太郎の書き方が凄く良い。あと弥五郎もいいです。読んでいる人間にとっても一種のオアシス的存在っていうのかな。


あーでも唯一分からなかったのが、葛木兄弟のくだり。あれって結局熊太郎はやってないってことだったんだろうか?