『紀子の食卓』

なんか「園子温むきだし特集」だとかで。ヒューマントラストシネマ渋谷にて鑑賞。観るのは二回目、劇場で観るのは初でした。


いやあやっぱりこの作品大好きだなぁ。『愛のむきだし』と同じく、好みはばっさり分かれる作品だとは思いますが……ちなみに『自殺サークル』の続編的作品で、やたらと前作を示唆するような台詞が出てきますが、まあ自殺サークルは観なくてもいいんじゃないかな……というのも僕がこの作品をあまり好きじゃない、という私的理由なのですがw 作品のテイスト的には、自殺サークル愛のむきだしの中間的作品のような感覚。


全編モノローグで話は進んでいきます。最初も真ん中も最後もぜんぶモノローグびっちり。でも意外と不快じゃないのです。実際、映像で語っていることをなぞるようなモノローグが多くて、モノローグで心情とかを悟らせようとするよりは思考だだ漏れみたいな感じかな。意外と詩的表現も多くて、おーなるほどなーといった感じ。さすが「ジーパンを履いた萩原朔太郎」と異名を取ることだけありますw
ストーリーというか構成は上手い。様々な視点、時間軸でころころと話が変わっていくにもかかわらず、2時間半ぐらいの長丁場はさくさくと進んでいきます。それどころか尺不足な感じすらするんだよなあ。登場人物の造詣がいまいち浅くて、役者の演技力に目くらましされている感じはする。そんなことも気にならないぐらいキャストの演技はみんな凄いんだけどw あと物語的な着地点はあまり明確ではないんだよね。僕はこのラスト好きですが。


というわけでキャスト。あんまり話題に上がることのない吹石一恵はハマり役だと思うんだけどなー。「垢抜けない田舎娘」っていう感じがぴったしじゃないですかw 演技も悪くないと思うけどなぁ。どうでもいいけど吹石一恵ってすげえエロい体つきしてますよね。つぐみと一緒にベッドで寝転ぶダブル谷間はやばすぎる。
光石研はさすがの存在感です。若手キャストが多い中、やっぱり出てくると画面が締まるなあという印象。つぐみは表情がいいよなぁと。立っているだけで全身からタダモノではない感がきちんと出てるのはすごい。最近見ないなぁと思ったらなんとAVデビューしてるそうですね……いい女優だっただけにショックだけど、ちょっと見てみたい……
そして凄まじいのが吉高由里子ですよ。ほぼ新人状態の、無名の女優をこんな大きな役に起用するなんて勇気あるなあ、と思ったらなんとデビュー作だそうで!(実際には『ZOO』の「SEVEN ROOMS」に出てたらしいけど、こっちが撮影は早かったってことかしら)そうは思えない演技力ですよ。ナレーションも上手いし演技も圧倒されるし。しかもむっちゃかわいいし。そしてこの時の吉高さんが、サークルの後輩にちょっと似てるということに気付いて少しテンションあがりましたw


演出はやっぱり、台所で四人が対峙するところの長回しシーンがいいなぁと。個人的に無駄にスプラッタにする必要はないんじゃないかな、とかは思うんだけどね……そんなんだから毎回R指定食らっちゃうんだろうし。あと映画館で観て良かった!って思ったシーンがひとつ。真っ暗な家の中から、早朝の外に出ていくシーン。外のシーンに一気にぱっと画面が変わって、暗い目に慣れていた観客は「うぉっ、まぶしっ」ってなるんですよ。ここがすごい良かった、登場人物と感覚を共有したようで。映像の綺麗さも相まって、観てて鳥肌立ちました。やっぱり映画は映画館で観てこそだよなあ。


これだけ絶賛しといてなんですけど、ストーリーの流れが特に素晴らしいとかそういうわけじゃないんですw うまく言えないんだけど、観終わったら呆然とした感覚に包まれるんですよね。虚脱感というか。全身の血液の流れが変わる感じと言ったら大袈裟でしょうかw ともかくオススメ出来るかどうかは別として、僕はこの映画は大好きです。そして、これが好きだという人とはいい映画友達になれそうな気がしますw