『冷たい熱帯魚』

まずいいのが映画の入り方。テンポのいい音楽と共に、女がスーパーの冷凍食品を詰め込んでいくシーン。ここから始まるんですが、これがすごくいい。演出と音楽両方とも良くてぐっと引き込まれました。というか園監督の映画って基本的に音楽がよかったりするんだけど、今回は特によかった。全体的にかっこよかったなぁ。
ストーリーはすごくエンタテイメントに特化しているのですが、でも心情描写もきっちりしてるからきちんと後に残る感じになってます。特に最初の煙草のあたりとかは印象的だったな。ああいうシーンをもうちょっと欲しかったかも。後半になると心情描写もクソもないぐらいハチャメチャになってってますw ただ後半で村田(でんでん)が社本(吹越満)に吐きかける罵詈雑言はなかなかぐさっときます。ここらへんがうまい。村田の言葉に説得力があるんだよね、殺人鬼のくせにw
というわけでこの映画の特筆すべき点は村田という人間の描き方だと思います。徹底した悪人、ってだけでなくて、前半の気の良いおじさんってあたりがゾクゾクしてていい。観てて違和感があるんですよね、「あ、この人やべえな」と。で、それを見て劣等感を抱く社本、っていう対比も素晴らしいです。ここら辺で既に上下関係が生まれてしまっていて、後半に活きてくるポイントだと思う。


あとこの映画の成功点はキャスティングですね。特にでんでん。だってでんでんだよ? 堤作品によくちらっと出てるあのでんでんですよ? 正直名前にはインパクトあるものの役者像としてはあまりはっきりしていなかったのですが、今回の作品で見方を180度変えることができました。ほんとすばらしい。でんでんもすばらしいけど、このキャスティングを考えた園監督もすばらしいw 吉高由里子といい満島ひかりといい安藤サクラといい西島隆弘といい、ほんとこういう人材の選出に長け、その魅力を最大限に発揮できる演出力を持つ監督さんだと思います。やっぱすきだなぁ。
主演の吹越満ももちろん良い。何がいいって、あのメガネの上げ方だけで卑屈が漂ってて素敵。あとは黒沢あすかはかっこよかったなーw 彼女は声がいいよね、エロくて。顔はそんなに美人じゃないんだけどすごく魅力的に映ってました。それに比べると神楽坂恵梶原ひかりはあと一歩、って感じかなぁ。神楽坂さんはおっぱい凄かった。けど、やっぱり他の役者と比べると霞んじゃう感じ。梶原ひかりは最後のシーンでもっとがんばってくれればもっと画面が締まったかもしれん。まぁでも同世代の役者に比べれば上手いとは思うんだけどねw 久々に見たけど(セクロボ以来?)子役時代から演技上手いと思ってたんで、がんばってもらいたいもんです。神楽坂さんは次回作の『恋の罪』にも出るらしいけどちょっと不安、かなぁ。
そういえば渡辺哲が光ってました。「強面だけど本当は気のいいおっちゃん」役が多かったから、こういう根っからの悪人は逆に新鮮。もうほんと怖かった。喋ったり顔ちょっと動かしたりするだけでもものすごい迫力。


そうそう、グロは中盤あたりで「あぁ、臓器ね。ふーん」となるのですが、後半やばいです。超血ぃ飛びます。腸も見えてます。これはきつい人にはきついだろうなぁと。「痛い」っていう描写はそれほどでもなかったから僕は平気だったんだけどね(グロよりも痛覚描写のほうが苦手……)
せっかくだからお金と時間が許せばもう一回ぐらい観に行きたいなぁと思える作品でした。まぁやっぱりむきだし・気球・紀子には敵わないかなぁという気もするんだけどねw あとちょこっとだけ流れてた園監督次回作の『恋の罪』はなかなか面白そうでした。「お気をつけあそばせ。その女、下品ですから」ってキャッチフレーズが素敵だ。