『狂覗』

渋谷UPLINKなるところで観てきました。不肖私、このような場所があることを初めて知ったんですけれども、かなり賑わっててびっくりした。40席ぐらいしかない小さなシアターだったんだけど、なめてかかって予約せずに行ったらまさかの満席。単館レイトショーで40席埋まるってかなりすごいですよ。まぁ出演者や製作陣の身内ってーのも多いんだろうけど。というわけで翌日はきちんと予約して鑑賞。その日も満席だった。すげーな。席も普通の席とはまた違って、体育館みたいなホールにやわらかめの座椅子並べた感じ。しかも一番前だったんで、ゆったりと足を伸ばしながら観られました。
そんな感じだったもんで、こりゃつまんなかったら熟睡できちゃうなとか思ってたんですが、展開がなかなか目が離せない感じで退屈に感じることはなく観られました。シナリオは本当によくできてた。


ある学校の教師が何者かに殴打され、学内で裸のままぐるぐるに縛られた状態で発見される。その教師は生徒たちの下着の写真を盗撮しては自らのHPに上げていた。その責任を取らされる形になった森(田中大貴)は、生徒たちの持ち物を、体育の授業中無断で抜き打ち検査をする、という手段を思いつく……っていうストーリーなんですけど、伏線の張り方も丁寧だし、驚かせるような展開もいくつもあって、しっかりエンタメしてるなーといった印象。生徒たちの顔も誰一人としてしっかり出てこなかったのも逆によかったかな、不気味な感じがして。得体の知れなさとか、教師からの無関心さっていうのもそれで表現できてた気がするし。まぁ口元だけ見ても、いやいやこれおっさんおばさんじゃないすか? って人結構いたけどね!
とはいえ、気になる点もいくつか。主人公の谷野先生(杉山樹志)の推理力がすごすぎて、いやいやもうそれサイコメトラーじゃないすか……ってなったシーンが多々。言ってしまえば、結論に至るまでの過程が雑。それと、この検査をしているうちに万田っていう一人の少女が浮かび上がってくるんですけど、このキャラクターはもうちょっとしっかり描き込んで欲しかったなあ。いやまぁ、伝聞での存在でしかないからかなり難しいとは思うんだけどさ。前半と後半の印象が違いすぎて、そうなってしまった理由もまぁ想像力で補完はできるんだけど、やっぱりなんとなく違和感は残る描き方だった。あと「スカウトされるくらいの美人」にはあんまり見えなかったのもちょっと……笑
あとあんまりよろしくないなぁと思ったのは演出ね。あんまりぐっとくる部分はなかったし、ところどころ狙いすぎてる部分が透けて見えて正直寒いなと思うところもあった。
まず谷野先生がトラウマ発症しすぎ。こういった経験があったからこそ今回は……っていうのを書きたいのはまぁ分かるんだけど、やたら多いし表現が陳腐だし、あと一番駄目だわと思ったのが下駄箱でのシーン。谷野先生の靴にムカデ(超おもちゃだった)とか虫が這いずる回るっていう妄想を見てしまうシーンがあるんだけど、これが一切過去のトラウマと関係ない。しかも表現としては使い古されてる。ってか、これじゃただのヤク中だよ。このあたりの描写はもっとスマートに出来なかったのかなあ。
最後5分の展開もかなり勢いで押し切った感がすごかった。いや、怒涛の展開っていったら聞こえはいいんだけどさあ……やけっぱち感がやたら強く感じたのは演出のせいもあると思う。ってかラストのやつはいらなかったんじゃないかね。生徒たちのシーンで終わっても良かった気がする。


とまぁ色々書いちゃいましたけど面白かったですよ。だからこそ演出が荒削りだったのが残念。まぁまだ若い監督さんなんだろうな、と思って調べてみたら意外と何作も作ってるベテランさんだった。うーん。
あ、でも冒頭の、谷野先生が殴られてるシーン、あそこだけは意味が分からなかった。あそこも想像力で補完しろってことなんかね? 分かりやすすぎる映画は製作者側の怠慢だけど、行間読ませすぎる映画も怠慢だとおれは思うぞ。