「嫌われ松子の一生」

中谷美紀に惚れ直しました。ここまで彼女をいいと思ったのは「ケイゾク」以来だったりして。

嫌われ松子の一生 通常版 [DVD]

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以下ネタバレ含みまする。すっげえ長いです。

もちろん中谷さん以外にもいい味出している人はいっぱいいるんだけど(特に瑛太市川実日子)今挙げた3人以外のキャスティングはドラマでもばっちりなキャスティングだったので納得なのですが、この3人は秀逸すぎて。中谷美紀は生き生きとしているよりも悲惨な状況が非常に似合っていて、特に怯える表情とかがこっちまでも怖くなってしまうほどなんですけど、だからこそラストシーンが映えるんだよなあ。あのお父さん(柄本明)の顔を振り返ったときの表情は素晴らしい。内山さんはこれを超える事が出来るんだろうか……多分無理。
映画のこのラストは本当泣けます。原作を忠実に再現しつつ、映画でしか表現できない技法でここまで魅せてくれるのは凄いと思う。「まげてのばして」で泣くとは思わなかったよ。あ、でも欲を言えば2点。皆で「まげてのばして」を歌っているシーンで赤木(スカパラの人)がいなかったのがちょっと不満。あとさっきも言った振り返ってお父さんを見るシーンで、例のタコ顔をやればお父さんが吹き出すのにも繋がるのになあと思ったんですけど……それじゃあやっぱふざけすぎかなあ。


最初につらつらとラストシーンについて語ってしまい申し訳ないです。でも個人的にはこの映画、松子(中谷美紀)が落ちぶれてからラストまでに良さが凝縮していると思うんですよ。てかそれ以外は超駆け足でしたからね。僕が好きな「白夜」や女子雑居房のシーンなんて歌のみだったし。だけど時間をかけるべきところにはじっくり時間をかけているその姿勢は素晴らしい。中島監督も中谷さんもこの原作を見て感銘を受けたようですが、だからなのかなんつーかきちんと「伝えたいこと」が書かれてるんだよなあ。特に家族のところ。松子が父親の日記を見るところや、紀夫(香川照之)との再会などなど。その分無駄というか、補足的な話はすっぱりとこそぎ落としているのには潔いと思います。だけどまさか明日香(柴咲コウ)の出番があれだけとは思わなかったけど……これ絶対中谷さんと柴咲さんが似てるからキャスティングしたよねこれ。
あと所々が微妙にリンクしているのも面白いと思った。「生れて、すいません」とか(わざと送り仮名も妙にしているし)月に顔が出てきて(劇団ひとりと伊勢谷友也)「松子」と言うシーン、そして島津(荒川良々)に切ってもらった髪形と同じ髪型を、想像の中で妹(市川実日子)に切ってあげたりとか。あとリンクとはちょっと違うけど、小野寺(武田真治)に追い詰められたときふとホクロから毛が出ている人(甲本雅裕)のことを思い出すとか「あるある」って感じだった。あーでも時事ネタはちょっとしつこすぎ? 時代の反映の象徴だっていうのは分かるんだけど。トイレットペーパーは印象的だったけど。あと最後に恋した人がアイドルっつーのも妙にリアルだったりして。あの大量の手紙を笑えないジャニオタとか絶対いると思うぞ。てゆーか松子を笑える人っているのかなあ。絶対どこかしら共感はすると思うんだけど。ドラマはともかく映画を見てそう思った。
そういえばこの映画、余計なシーンをこそぎ落とす事こそすれ、あまり激しい内容の変更はしなかったんだけど、松子を殺したのが中学生たちっていうのが妙に印象的。そういや今日も中学生がホームレス殺したっていうニュースやってたし、あながち映画の中の話だけだとは言い切れないというか……松子が死んだとき、松子の周りだけに花が咲いてて、「他人から見れば不幸な松子だけど、松子は幸せだった」っていうのがあのシーンだけで理解できるようになってて感動した。何度も言うけど、あのラストシーンは感涙モノ。原作を見てるからこそなのかもだけど、でもやっぱり素晴らしい。
とにかく久々に「女優・中谷美紀」が見れて良かった。朗らかなシーンから淫らなシーン、惨めなシーンまで色々と様々な中谷美紀が堪能できたし。歌も久々に聴けてよかった、彼女の歌好きなんで。「生〜まれ〜て来〜なければ〜♪」。ずっと気になっていたガリガリぶりも、どうやら中島監督から「太れ」と言われたらしく(by「嫌われ松子の一年」著・中谷美紀)今回は全然気になりませんでした。ちなみに長髪&眼帯のときの中谷さんが一番好き。眼帯フェチとかいうのではなく、髪が長いのが好きなので。実日子ちゃんも髪が長いときのほうが可愛いと思う。


●笑ったところ
・眼鏡無しマギー。最初誰かと。
谷原章介
・「そんなの嘘、嘘、うっそ〜〜〜〜♪」
・小野寺「いーってぇマジで痛ぇ! パッと見たらそれほどでもないんだけど」
・松子がマンションから飛び降りようとするものの死ねないシーン。笑ったっつーか驚いた。
・だんだん美化されていく島津の思い出。つか荒川良々
・「やっぱやだあ」と薬を吐き出す龍(伊勢谷友也)。そういや彼に限らず、この映画のメイクは凄かったな。ドラマもこれを見習って欲しい。


●印象に残ったシーン
・前述した様々なリンクしている部分
・何度も繰り返される「人生が終わった、と思いました」
柄本明の吹き出す演技。柄本さんのエキセントリックな役もいいけど、こういう普通の父親も良かった。
・八女川(宮藤官九郎)の穴の開いた靴下
・島津が寝ている間に警察に引き取られる松子。小説もドラマも必死で引きとめようとするんだけど、逆にこっちのほうが泣けた。
・紀夫との最後のシーンのとき、涙を堪えつつ笑顔で笙に手を振る松子。こっちまで泣きそうに。やっぱドラマでこれをやらないのは大失敗。
・松子の最後&ラストシーン(しつこい)

嫌われ松子の一年

嫌われ松子の一年