深町秋生『果てしなき渇き』

凄惨な殺人現場を目撃してしまった男・藤島。そしてある日彼は、別れた妻と同居していた自分の娘・加奈子が失踪していた事を知る。部屋に残された覚せい剤から、加奈子への疑心暗鬼が広がる。そして加奈子が藤島の目撃した殺人事件との結びつきがあるのではないかということが判明。そして過去。加奈子に恋をした一人の少年がいた。現在と過去が交差し、「藤島加奈子」という少女の姿が浮かび上がってくる。

果てしなき渇き (宝島社文庫)

果てしなき渇き (宝島社文庫)

ブラックな展開の連続。救いのある展開も皆無。作者は男の人かな? 最近は女の人でもグロい小説いっぱい書くので分からないけど、作品の内容からなんとなく。解説は本の裏の説明を噛み砕いて書いたものですが、はっきり言って「藤島加奈子」という少女の姿なんてまったく浮かび上がってきません。なんかやたら神格化されてるだけのような気も。そして投げっ放しの展開が多いんだよなあ。殺されたら殺されっぱなし、みたいな。「で、こいつはどうなったの?」っつーのがいっぱい。勢いがあるのは確かだけどストーリー的には結構破綻してたりするかも。以下ネタばれあり。


一番無駄だと思ったのが過去のシーン。交差するなんて書くからもっと深く関わってくるかと思ったのに、主人公の少年(名前失念)がひたすら酷い目に遭い続けて、最後は死ぬだけ。なんじゃそりゃ、って感じですよ。これは無駄だったなあ。
ラストも唐突だよねー。まさかあの女教師が関わってくるとは思わなかったけどさ。ただ女教師が藤島に殺されておしまい、だと今までのヤクザとの絡みとか凄惨な殺人事件とかなんだったの?って感じもしなくもない。ここミス大賞だっけ? そのわりにはプロットがなぁ……というか自分が「多視点の絡み」に弱く、過剰な期待をしてしまう傾向にあるせいでもあると思うんだけどね。その点では「ラッシュライフ」は本当凄かったよ。