桐野夏生『I’m sorry, mama.』

物心がついた時彼女は売春宿に居た。売春婦にいびられて育ち、そして施設に送られた「松島アイ子」。盗み、殺し、焼き、彼女は全ての欲望を躊躇無く吐き出す。汚れてしまった白い靴と語り合いながら、彼女は自分の「母親」を探す。

I'm sorry, mama. (集英社文庫)

I'm sorry, mama. (集英社文庫)

相変わらず怖いです、桐野さん。だけど『グロテスク』とかに比べたらエグい感じはしないかな。といってもこれは僕が男だからかもしれませんが。女性が読んだらまた違う感じを受けるのではないかと。
残虐記』がちょっとストーリー性に欠けるな、と思ってたのですが、今回は筋道もちゃんと立ててあって面白かったです。前半の幼児プレイだの女装趣味だの、な変態野郎オンパレードも凄かった。桐野さんの凄いところは鬱々とした話をさらっと書いて、そして読者もさらっと読めてしまうところ。なのでさくさく読めました。それほど惹きつけられる展開ってわけでもないのにやたら続きが気になるのが不思議です。
松島アイ子の母親についての話がメインになるのかもしれませんが、この母親の過去やアイ子の出生の秘密がちょっと弱かったかな。あれが真実なのかどうかも分からないし。そして相変わらず桐野さんは締め方が美しくないです……だから彼女の短編とかは苦手なんだろうな、僕。