「それでもボクはやってない」

痴漢容疑の冤罪をかけられた男の1年を描いた作品。

それでもボクはやってない スタンダード・エディション [DVD]

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確かにこれは怖い。まず誰も悪者じゃない事が怖い。あの女子中学生だって金目当てで……ってわけじゃなさそうだし、証言者も誰も嘘を吐いているとは思えないっていうところが。あと裁判のシーンも怖かったなあ。電車に乗ることなんて日常茶飯事で、もしも自分がああいう立場に立たされたら、記憶がはっきりしてる自信なんて微塵も無いよ。周りに誰が乗っていたかとか、どっちの方向を向いていたとか、何も覚えてなさそうだもん。
それに裁判官という人物は、「被害者を中心に裁判を下す」「容疑者は嘘を吐く人間だと考えている」っていうのを目の当たりにさせられた気分です。普通に考えたら当たり前なんだけど、それを冤罪だと分かっている主人公の立場から見ると、やっぱりゾッとする。自分が悪者だと思われてるんだもんなあ。


映画自体は淡々としていて、エンタテイメントとかとはかけ離れた感じなんだけど、2時間半飽きることなく見れました。脇も芸達者で揃えられていたのも良かったけど、何より主演の加瀬亮が良い。彼の演技はあまり見た事がなかったんだけど、こんなに上手かったんだなあ。言葉のつまり具合や上ずったりするところが凄くリアルで、感情移入してしまいました。あまりドラマ的な部分がなかったのもこの映画の良いところだと思う。