伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』

引越し早々、隣人から「本屋を襲わないか?」と誘われた椎名。たまたまペット殺しの会話を聞いてしまい、危機的状況に陥るペットショップの店員・琴美。2人の物語が、現在と過去を交差して、やがて真実が明らかになっていく。第25回吉川英治文学新人賞受賞。

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

面白かった。面白かったんだけど、ちょっと物足りないかなあ。はっきり言って物語の「起承」が長すぎ。「転結」の部分の上手さはさすがなんですけどねえ。「現在」と「過去」のパートの始まりと最後の文章がリンクしてるのも面白かったし、終わり方も綺麗でした。相変わらずラストへの伏線はバリバリなんだけど今回はちょっと分かりやすめだったかな。なので『ラッシュライフ』『陽気なギャング』に比べるとカタルシス度は低め。あとタイトルがかなりいいですねこれ。かなり目を引く奇妙なタイトルのような気もしますが、物語を読んでみるとしみじみすること間違いなし。
そしてやっぱり犬は出てきます。ちなみに猫も出てきます。でも猫好きはかなりきついんじゃないかなこれ……僕もきつかった。特にあの電話でのシーンは「あああぁぁぁぁorz」って感じになった。犬はわりと最後の最後まで優遇されてます。悔しい。
しかしこれを映画化するって凄いな。つーか原作そのままじゃ映像化不可能でしょう。キャストについては椎名役の濱田君は何かのほほーんとした感じがハマってると思うし、麗子さん役の大塚寧々もかなりいいと思う(麗子さんは他の作品に出てきそうな気がする)。だけど問題が謎の役の松田龍平だよね。
というわけで、以下壮絶なネタバレを含みます。ご了承くださいませ。




(ここからネタバレ有!)
で、松田龍平役の事ですが、多分彼が河崎役(本物)なんだろうな。ちょっと美青年というイメージではないけど、まーミステリアスではあるわな。で、隣人の河崎(瑛太)とドルジ(田村圭生)が原作どおりの関係だとしたら、これはまたおかしなことになるわけで。ドルジはもしかして整形したって役柄なのか? でも整形する必要性が無いよな……原作では「咄嗟に嘘を吐いた」わけだし。まーこればっかりは映画を見てみないと何とも言えないですね。
あと映画化する際には、あのクロシバは絶対出していただかねば。あれと「ボブ・ディランはまだ鳴っているんだろうか?」のセリフでラストがぐっとよくなったもんなあ。しかし犬の使い方本当上手いな伊坂さんは。